二つの恒星を持つ太陽系
アメリカのNASAが地球周回軌道上に打ち上げたハッブル宇宙望遠鏡は、 私たち
が住む太陽系の外にある他の太陽系を探して日々活躍しています。 既に複数の惑
星を軌道上に持つ相当数の太陽系が発見されていますが、その中には、太陽(恒星
)を二つ持つものも存在するようです。微分方程式の数値計算として、恒星を二つ持
つ太陽系を例に取り上げて議論を進めたいと思います。 この場合、 二つの恒星がそ
れぞれの軌道上を運動することになります。
解くべき運動方程式は次の二つになります。これらを同時に解く必要が出てきます。
恒星1の運動方程式:
MS1 d2RS1 /dt2=−MS1 MS2 G(RS1−RS2 )/ |RS1−RS2 |3
恒星2の運動方程式:
MS2 d2RS2 /dt2=−MS2 MS1 G(RS2−RS1 )/ |RS2−RS1 |3
上式において、存在するかもしれない惑星からの影響は無視しています。 恒星2の
質量が恒星1の質量のちょうど2倍あるとして、 二つの式から定数などを省略すると
d2R1 /dt2=−2(R1−R2 )/ |R1−R2 |3
d2R2 /dt2=−(R2−R1 )/ |R2−R1 |3
ここで、恒星の運動方程式であることを示す添え字も省いています。
したがって、解くべき式(成分表示)は次の四つの式となります。
d2X1/ dt2=−2( X1−X2)/ {( X1−X2)2+( Y1−Y2)2}3/2
d2Y1/ dt2=−2( Y1−Y2)/ {( X1−X2)2+( Y1−Y2)2}3/2
d2X2/ dt2=−( X2−X1)/ {( X2−X1)2+( Y2−Y1)2}3/2
d2Y2/ dt2=−( Y2−Y1)/ {( X2−X1)2+( Y2−Y1)2}3/2
惑星が恒星が運動している平面から大きく外れて運動している場合には、Z成分も
考慮する必要が出てくるかもしれませんので、注意してください(上の場合は、惑星の
影響をまったく無視しているのでZ成分は必要ない)。
では、実際に初期値に数値を入れて二つの恒星の軌道を計算してみます。軌道の計
算のし方は惑星の場合と同様です。 ただし、位置・速度・加速度を表す変数の数は
2倍になります。
以下は、十進BASICを使った恒星の軌道計算プログラムです。
(X1、Y1)=(20、0)、 (X2、Y2)=(−10、0)、 (VX1、VY1)=(0、0.2)、(VX2、
VY2)=(0、−0.1)とし、時間ステップとして600まで取った結果を示します。
上の数値を2Dグラフィックスを使って表示したものは次のようになります。
赤のラインが恒星1の軌道であり、青のラインが恒星2の軌道です( 図1参照、変更
後)。100ステップ毎に、恒星同士を線で繋いでみました。
上記のような二つの太陽(恒星)を持つ太陽系に、 いくつかの惑星があったと仮定し
ます。 このときの惑星の軌道を数値計算してみてください。 多分、 惑星の軌道は単
純な楕円にはならないかもしれません。その場合でも、ケプラーの法則のようなも
のが成り立つと言えるでしょうか!?