台上に球が二個ある場合のアニメーション
ビリヤードの台上に球が二個ある場合は、球同士の衝突も考慮しなければなりませ
ん。ただし、球と台の縁との衝突と同じように、球と球との衝突も完全な弾性衝突で
あると仮定します(図1参照)。
<∠ABI→θ、質量→M、速さ→V>
(図1、Functionviewで作成)
質量と速さが同じ二つの球が角度θで衝突した場合に、その後の運動がどうなるか
を物理の運動量保存則を使って検討してみます。 水平方向(右向き)をX軸の+方
向、 垂直方向(上向き)をY軸の+方向として考えます。 衝突前の球1と球2の速度
成分は、それぞれ以下のようになります。
球1の速度(X成分): 0(衝突前)
球1の速度(Y成分): V(衝突前)
球2の速度(X成分): −V SINθ(衝突前)
球2の速度(Y成分): V COSθ(衝突前)
両方の球の重心(球の中心)に注目し、 球1を基準とする座標系で考えると、 球2の
衝突前の相対速度の成分は、
球2の相対速度(X成分): −V SINθ(衝突前)
球2の相対速度(Y成分): V COSθ−V(衝突前)
となります(図2参照)
<衝突前の球1を基準とした場合>
(図2、Functionviewで作成)
衝突時にそれぞれの球が受ける力の方向が球の中心間を結ぶ方向を向いていると
仮定すると(実際は、完全な球形ではないなどの理由で、多少ずれてくる)、球1と球
2の衝突後の相対速度(衝突前の球1と共に動いている座標系で見た速度)は、
球1の相対速度(X成分): VX1(衝突後)
球1の相対速度(Y成分): 0(衝突後)
球2の相対速度(X成分): VX2(衝突後)
球2の相対速度(Y成分): V COSθ−V(衝突後)
となります(VX2=0と予想できるが)。運動量保存則(X方向)から、
−MV SINθ=MVX1+MVX2
また、エネルギーの保存則から、
M(−V SINθ)2/ 2+M(V COSθ−V)2/ 2=
MVX12/ 2+MVX22/ 2+M(V COSθ−V)2/ 2
が得られます。以上の二式を整理して、
−V SINθ=VX1+VX2・・・・・(1)
(−V SINθ)2=VX12+VX22・・・・・(2)
さらに、式(1)をVX2に関して解いたものを式(2)に代入して、
(−V SINθ)2=VX12+(−V SINθ−VX1)2
→ 0=VVX1SINθ+VX12
→ 0=(V SINθ+VX1) VX1
VX1=0は解ではないので、VX1=−V SINθということになります。 したがって、
元の座標系でみた衝突後の二つの球の速度は最終的に、
球1の速度(X成分): −V SINθ(衝突後)
球1の速度(Y成分): V(衝突後)
球2の速度(X成分): 0(衝突後)
球2の速度(Y成分): V COSθ(衝突後)
となります。 つまり、衝突時の球の中心間を結ぶ方向の速度成分が入れ替わること
が判ります。
課題(その1)
球同士の衝突時において、 直線運動のエネルギーのどのくらいが回転運動のエネ
ルギーに変換されるか考えてみてください。 回転運動のエネルギーが最大になる条
件は何ですか。上記の議論では、このエネルギーへの変換は無視しています。
それでは、 上記の計算結果に基づいて台上に球が二個ある場合のアニメーションを
作成してみましょう。 球同士が衝突するときに、 球の中心を結ぶ方向の速度成分が
入れ替わるようにプログラムを修正します。