楕円の方程式
楕円の方程式は、 太陽の周りを公転している惑星や惑星の周りを回っている衛
星、そして人工衛星などの軌道を計算する上で極めて重要な式となっています。
ここでは、 楕円の定義から検討して楕円の方程式を求めることからスタートします
。 まず楕円の定義ですが、 楕円とはX軸上の二点AとB(原点から等距離にある)
から軌道上の点Pまでの距離APとBPの和が常に一定になるように描いた図形で
す(図1参照、Functionviewで作成)。
楕円の式: X2/ a2+Y2/ b2=1 (2a:長径、2b:短径)
AP+BP=AQ+BQ (一定)
線分APの長さをL1、線分BPの長さをL2とします。 楕円の定義からL=L1+L2
=一定となります。ここで、楕円の軌道がX軸およびY軸と交わる点をそれぞれ、C
(a,0)、D(0,b)、E(−a,0)、F(0,−b)として( ただし、aとbは正の数でしかも
a>b)、点Pが点Cに来たときを考えるとLが2aになることが判ります。
次に、線分AOと線分BOの長さ cがいくらになるかを考えましょう。点Pが点Dに来
たとしましょう。このとき三角形AOPは直角三角形になります。したがって、ピタゴ
ラスの定理からc2+b2=a2という関係が得られます。 この関係式から cは計算
できます。
c=(a2−b2)1/2
以上で、楕円の定義から楕円の方程式を導く準備ができました。それでは、楕円の
方程式を導いてみましょう。軌道上の点Pの座標を(X、Y)とします。
L1={(X+c)2+Y2}1/2 L2={(X−c)2+Y2}1/2
L=L1+L2=2aから、両辺を二乗して、
(X+c)2+Y2+(X−c)2+Y2+2{(X+c)2+Y2}1/2{(X−c)2+Y2}1/2
=4a2
上記における最後の式をさらに整理すると、
{(X+c)2+Y2}1/2{(X−c)2+Y2}1/2=2a2−(X2+Y2+c2)
両辺を二乗した後、右辺にc2=a2−b2を代入して、
{(X+c)2+Y2}{(X−c)2+Y2}=(a2+b2−X2−Y2)2
→(X+c)2(X−c)2+(X+c)2Y2+(X−c)2Y2+Y4
=(a2+b2)2−2(a2+b2)(X2+Y2)+(X2+Y2)2
→(X2−c2)2+(X2+2cX+c2)Y2+(X2−2cX+c2)Y2+Y4
=(a2+b2)2−2(a2+b2)(X2+Y2)+(X2+Y2)2
→−2c2X2+c4+2(X2+c2)Y2
=a4+2a2b2+b4−2(a2X2+b2X2+a2Y2+b2Y2)+2X2Y2
さらに、左辺にc2の式を代入して整理すると、
→2b2X2−2a2b2+2a2Y2=2a2b2−2b2X2−2a2Y2
→b2X2+a2Y2=a2b2
→X2/ a2+Y2/ b2=1 (導出の終了)
一番最後の式が一般的に知られている楕円の方程式になります。 円の方程式は
c=0の場合(点Aと点Bが原点Oに完全に一致する場合)であることに注意しま
しょう。
曲線の長さ
中学で習うピタゴラスの定理を使えば、傾いた直線の長さも計算できますが、曲線
の長さは計算できません。 どうすれば、 曲線の長さを計算できるかを考えてみます
。 まずは、 円の周長を計算してみましょう(内接する正多角形の周長での近似は
既に行っている)。
円の周長を積分で求める訳ですが、最初に微小な円弧の長さを二等辺三角形の
底辺の長さで近似することを考えます(図2参照)。角AOBが微小な円弧ABに対応
する微小な角です。線分OCは角AOBの中線です(角AOCおよび角BOCの大きさは
角AOBの大きさのちょうど半分になっている)。 微小な角の大きさをΔθとし、円の
半径をRとすれば、微小な円弧の長さは次のようになります。
微小な円弧の長さ: ΔL=2R SIN(Δθ/2) (近似)
(Functionviewで作成)
ここで、Δθ/ 2が十分に小さい角だとして、SIN(Δθ/ 2)をΔθ/ 2で近似する
ことを考えます。以上から、円の周長を求める積分式は、
微小な円弧の長さ: ΔL=2R Δθ/ 2=RΔθ (近似)
積分式: ∫R dθ=2πR
ここで、積分の範囲は、0から2πまでです。
それでは、楕円の周長を求めてみてください。円周の長さみたいには、簡単に行か
ないかもしれません。
電子が電場と磁場がある中を運動する場合、軌道の形状が螺旋になることがあり
ます。以下の図は、一つの螺旋軌道を示したものです。 このときの軌道の長さを求
めてみてください(図3参照、Functionviewで作成)。
螺旋軌道を t を使ってパラメータ表示すると次のようになります。
X=COS t Y=SIN t Z=t