円運動の中心力


 

円運動直線運動とならんで物理ではよく出てくる運動形式です。 太陽の周りを

回っている地球もほぼ円運動に近い運動をしてます。 また、地球上の天気や海上

の様子を観測している気象衛星、  他国へ電波を中継する通信衛星がとっている

静止軌道もほとんど円軌道と言っていいでしょう。そういう観点からすると、円運動

の性質を理解することは重要だと言えます。

 

円運動の性質を簡単に考察してみましょう。円運動というからには、運動の中心は

円の中心になります。そして、その中心から運動している物体までの距離は当然、

円の半径ということになります。 速度の大きさ一定ですが、 向きは変わるので

加速を持ちます。運動の周期円周の長さを速さでった値なることも理解

できると思います

 

それでは、高速で運動する物体がなぜ中心から離れずに一定の距離を保こと

ができるのでしょうか。 答えを先に言ってしまえば、中心力が物働いいる

です。この力が物体に円運動をさせているのです。この中心力にはいろいろなケー

スがあります。たとえば、地球や人工衛星で万有引力ですし、もの先端に付い

重りでは糸の張力ということにす。   あまり正確な表現ではありませんが、

原子核の周囲を飛び回っている電子は、の電荷と−の電荷の間に働くクーロ

ン力がその中心力になっています。

 

数学の力を借りてもっと詳しく円運動を分析してみましょう。高校で習う曖昧

で判り難くしている最大の要因は数学的な記述の欠如です。特に、力に関する問

題についてはベクトル解析がポイントになります( 発展編クトル解析を説明す

る予定です)。

 

以下の図は円軌道を描いたものです(図1参照、Functionviewで作成)。中に

、いろいろなパラメータを書き込みました。 運動の向きは反時計方向にとっていま

す。

 

EN-UNDO-SETUMEI.GIF - 3,674BYTES

 

上記のパラメータを使うと円運動の周期は2πR / Vとなります。 角速度は単位時

間当たりの角度の変化量ですのでΔθ/Δtですらを整理したものが以下の

式です。ただし、V=|V |=|V |=|V |です。

 

周期: T=2πR / V   角速度: ω=dθ/dt (極限で)

 

角速度を使って周期を表すと、

 

T=2π/ω

 

よって、速度と角速度の関係は

 

V=Rω

 

となります。

 

一周がラジアン表示2πになるので、   それを単位時間の角度の変化率ωで割

れば周期になることは理解できると思います。

 

次に、加速度の値を求めてみましょう。 図1においてVが V1から微小時間った

後の速度だとすると、図におけるθΔθになります。また、これら二つの速度ベ

クトルの始点を一致させて描いたものが以下の図になります( 図2参照)。ベクトル

間にできる角度がΔθになることに注してください。

 

EN-UNDO-KASOKUDO.GIF - 4,415BYTES

 

したがって、加速度の大きさは以下の式で与えられます。

 

加速度:  |A |=|dV | / dt

 

上図から、次の関係が得られるので、

 

|dV |=|V | dθ(極限で)

 

上の二つの式と前の結果から、

 

|A |=|V | dθ/ dt=V dθ/ dt=R ω

 

が得られます。

 

速度ベクトルと加速度ベクトルの大きさは判ったので、 これらの向きを調べてみま

ょう。円運動の中心(原点O)から物体の重心に向かうベクトルをベクトR(

ベクト)とします。このベクトルと速度ベクトルの内積をとります。

 

RVR ・(dR /dt)=(1/2)d(RR )/dt=(1/2)dR/dt=0

 

上記の式で、R=|R |が一定であることに注意してください。

 

以上より、RV という結果が得られます。

 

つまり、速度ベクトルの向きは円の接線方向になります(図1参照)。

 

加速度ベクトルに関しても、 速度ベクトルと加速度ベクトルの内積をとって向がど

うなるか考えてみましょう。

 

V ・AV ・(dV /dt)=(1/2)d(VV )/dt=(1/2)dV/dt=0

 

この場合も、V=|V |が一定であるので、VA という関係が得られます。

 

ゆえに、 加速度ベクトルの向きは円運動の中心方向であることが判ります。 これ

で、円運動の性質が定量的にかなり判ってきました。 混乱のもとになっている見か

の力である遠心力については別なところで説明します。

 

結論としては、  円運動を決定しているのは物体の速度とその物体に働いいる

心力であるということになります。

 

最後に、速度と中心力の関係式を導いてみましょう。 物体の運動方程式からスタ

トします。

 

A =mdV /dt=F (中心力)

 

大きさについて考えると、

 

mA=mRω=mV/R=F

 

上式から判るように、   速度と中心力の大きさがこの式を満足するように円運動は

行われます。 すなわち、 速度と中心力の大きさそして物体の質量が判ると、 円運

動の半径ます。

 

受験戦争を勝ち抜くにはいろいろな公式暗記しなければなりませんが、それより

重要なことはそれらの式がどうやって導出されたかです。大学の理学部を目指

される受講生の方はそちらにも関心を向けるようにしてください。

 

円運動の問題(その1)

円運動の問題(その2)

地球の公転速度

静止衛星の軌道半径

二物体の運動(質量がほぼ同じ)

三物体の運動

 

 


 

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