フラーレン分子の仲間
1.フラーレン
まず、後ろに隠れた部分を含めてC60分子の全体像を図1に示します。これと似た
構造を持つ分子を幾何学的な観点から探してみます。
<点→炭素原子、線→化学結合、特に、線(桃色)が二重結合を示す>
(図1、十進BASICによる3Dグラフィックス)
上図において、点線の部分が後ろに隠れている部分です。二つのC60分子は互い
に結合する事が可能と思われます。例えば、一つの六角形構造の中にある三つの
二重結合の一つの結合が切れて隣にある C60 分子の同様な部分と繋がれば、そ
れらの分子は化学的に繋がる事になります。この場合、六本の結合手で繋がります
。電子顕微鏡などを使って、この種の構造の分子が存在するか、調査してみてくだ
さい。
課題(その1)
五角形の構造を介して、 二つの C60 分子が繋がる事は可能ですか。 ’球に関す
る問題(その1)’で説明したように、同じ半径を持つ球に隣接する球の最大数は1
2です。正二十面体の各頂点を削って作ったサッカーボール形状は12の五角形を
持ちます。従って、上記の構造を介して分子が繋がる事ができれば、空間を効率良
く埋める事ができます。つまり、C60の結晶構造が得られます。 勿論、五角形の向
きなども揃ってなければなりません。
課題(その2)
六角形構造を介して結合した(C60)2の3D図を作成してください。
2.カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは日本人の飯島氏によって発見された炭素原子から構成さ
れた新しい分子です。この構造を少し考えてみます。図2は炭素原子が六角形構造
状に繋がってできた平面分子です。これを図3のようにロールして両端を繋げると、
円筒状のカーボンナノチューブになります。
<点→炭素原子、線→化学結合、特に、線(桃色)が二重結合を示す>
(図2、十進BASICによる2Dグラフィックス)
上図において、周辺部にある原子に関しては一部化学結合を省略しています。
<点→炭素原子、線→化学結合、特に、線(桃色)が二重結合を示す>
(図3、十進BASICによる3Dグラフィックス)
上図において、円筒構造の上下端にある原子に関しては一部化学結合を省略して
います。
幾何学的な観点から、図2の平面分子をロールできる条件を考えてみます。数学的
な制約が化学的な構造に影響を与える良い例になります。図4は図3のコーナー部
にある分子構造を一部拡大したものです。
<点→炭素原子、線→化学結合、特に、線(桃色)が二重結合を示す>
(図4、Functionviewで作成)
側面にある六角形構造(A−B−C−D−E−F、 G−H−I−J−K−L、 T−F−E
−N−M−S、 O−L−K−U−V−P)の平面性を維持しようとすると、 コーナー部
にある六角形構造 (E−D−G−L−O−N、 M−N−O−P−Q−R) の平面性が
維持できなくなることに注意してください。実際の分子では、全ての六角形構造に平
面性からのズレが生じ、自ら微調整して円筒構造になることが予想されます。また、
二重結合を持つ六角形構造と二重結合を持たない六角形構造ではそのズレの大き
さにも差がでてくるかもしれません。
まずは、均一なズレを仮定して図2の分子構造を再構築してみます。
課題(その3)
量子力学的な観点から、各六角形構造の平面性からのズレの大きさを見積もってく
ださい。
3.グラフェ―ン
フラーレン関係の記事です。さらなる学習の参考にしてください。
(1)Virus Structure Inspires Novel Understanding of Onion-like Cabon.....
(2)Buckyballs and Diamondoids Join Forces in Tiny Electronic Gadget
(3)Rare 'Baby Rattle' Molecules Reveal New Quantum Properties of H2O and H2