重力下のひもの形状


 

円周率の計算で使ったモンテカルロ法を活用して、二点で結ばれた長さのひもが

重力下でどのような形状になるかをシミュレーションしてみましょう。  ひもの伸縮性

は考慮しないものとします。

 

シミュレーションの進め方は次のようになります。ひもを結び付ける二つの座標を決

定します。 をひもを結びつけている点の一つ目のX座標だとし、を二つ目のX

座標とします。これらのX座標間をN等分します。 N等分した領域の境い目のX座標

は、それぞれ、・・・・・N−1となります。 これらのX座標とペアになるY

座標を、乱数を使ってある範囲でランダムに選びます。 これによって、N−1個の新

たな座標点ができます。 XからXまでをそれぞれ直線で結んでその長さの合計が

Lに十分に近ければ、以下のステップに移ります。

 

上のプロセスでひもの長さは要求される条件を満足しているので、  ひもの位置エ

ネルギーを計算することを考えます。位置エネルギーはMGHで表されるので(Mは

質量、Gは重力加速度、 そしてHは高さ)、 ひもの線密度ρとして各区間のひも

の長さは、

 

={(X−Xi-1+(Y−Yi-11/2

 

となるため、 区間[Xi−1、X]のひもの位置エネルギーはρL(Y+Yi-1)/2となり

ます。したがって、ひも全体の位置エネルギー(近似)は、

 

ΣρL(Y+Yi-1)/2  (i:1→N)

 

と得られます。この位置エネルギーに関して最小値を持つ点の組み合わせを、結局

、この問題の解とする訳です。 シミュレーションの収束性を高める為に、 ひもの形状

対称性を取り入れています。 つまり、ひもの形状は次の三つの原則で決定される

ことになります。

 

ひもの長さ一定  ・位置エネルギー最小  ・対称性

 

これらは、中学生や高校生でも十分に理解できる内容です。とは言え、線密度にバ

ラツキがあったり、 短い棒のような曲がらない部分が連結されていてもシミュレーシ

ョンできる所が大きなメリットでしょう(解析的には、解くことがほとんど困難なケース

)。ただし、この場合は対称性を仮定できないので、シミュレーション条件を工夫した

り、シミュレーション時間を長くする必要性が出てくるかもしれません。

 

それでは、 十進BASICを使って重力下のひもの形状を求めるプログラムを考えて

みましょう。 ひも全体に亘って、ひもの線密度が一定であると仮定しているので、位

置エネルギーの項からρを落として比較しても問題ありません。  このプログラムに

おいて、以下の二つの外部副プログラムが重要になります。

 

HIMOLENGTHCHECKING(ひもの長さのチェック)

ENERGYMINIMIZATION(位置エネルギー最小化)

 

重力下のひも形状のシミュレーション・プログラム

 

最初の外部副プログラムでは、ひもの分割数が偶数の場合と奇数の場合で多少コ

ード内容を変えていますので、注意してください。図1から図3は、シミュレーション結

果です。ひもの長さを10に固定し、両端の結び目間の長さをと変えました。

長さの設定値に対して、誤差の許容範囲は0.01です。 また、この条件を満足する

200の組み合わせから、 位置エネルギーが最小なものを解として採用しています。

縦方向のグリッド間隔は、いずれの図でもとなっています。 ちなみに、 分割数は

です。 奇数の分割数を採用したため、最下部の線分の形状が水平方向となってい

ます。

 

<結び目間の長さが4の場合>

JUURYOKU-KA-HIMO-KEIJOU-1.GIF - 4,857BYTES

(図1、十進BASICによる2Dグラフィックス)

 

<結び目間の長さが6の場合>

JUURYOKU-KA-HIMO-KEIJOU-2.GIF - 4,768BYTES

(図2、十進BASICによる2Dグラフィックス)

 

<結び目間の長さが8の場合>

JUURYOKU-KA-HIMO-KEIJOU-3.GIF - 4,687BYTES

(図3、十進BASICによる2Dグラフィックス)

 

 

課題(その1)

 

実際のひもを使ってひもの形状がどうなるかを確かめてみてください。  それをシミュ

レーション結果と比較することは大切です。 もし、違いがあるとすれば、その原因

考えてみてください。

 

課題(その2)

 

上記の例では、 結び目の位置での高さは同じでした。 この高さが異なっても使える

ようにプログラムを修正してください。

 

結び目の位置の高さが異なる場合のシミュレーション

 

課題(その3)

 

ひもに伸縮性がある場合も考えてみてください。 質量がある複数のバネを連結した

ものをイメージしても構いません。 この場合は、位置エネルギーの他に弾性エネル

ギーも考慮する必要がある?

 

 


 

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