ネット変形型の抵抗の計算
抵抗値の上限を評価するために、抵抗網の一部のみを考慮した場合の計算を行い
ます(図1参照)。この場合、3Rの抵抗が並列に接続された形になっています。よっ
て、点Aと点Bから見たときの抵抗値RABは、
RAB=1/(1/3R+1/3R)=3R/2
となります。
<抵抗値は全てR>
(図1、十進BASICによる2Dグラフィックス)
それでは、 もう少し抵抗の数を増やして抵抗値を計算します(図2参照)。 電流が流
れる経路が増加するので、 RABの値も当然小さくなります。 各部を流れる電流を回
路の対称性を利用しつつ分類します。
I1=IAC=IAE=IDB=IFB
I2=IAG=IHB
I3=IGI=IGK=IIC=IKE=IDJ=IFL=IJH=ILH
I4=ICD=IEF
点Aと点Bの間を流れる全電流を I とすると、
I=2I1+I2、I2=2I3、I1+I3=I4
が得られます。また、点Aと点Cの間の電圧を考えると、
I1R=I2R+2 I3R → I1=I2+2 I3
これらの四つの式を連立方程式として解いて、
I1=2 I/5、I2=I/5、I3=I/10、I4=I/2
を得ます。
<抵抗値は全てR>
(図2、十進BASICによる2Dグラフィックス)
ゆえに、点Aと点Bの間の電圧VABは、
VAB=2(2 I/5)R+(I/2)R=(4 I/5+I/2)R=(13 I/10)R
=(13R/10) I
となり、点Aと点Bから見た抵抗の値は13R/10であることが判ります。 この値がR
を下回るかどうかを検討してみます。 図2の回路にさらに14個の抵抗を追加すると
、図3のような回路になります。
<抵抗値は全てR>
(図3、十進BASICによる2Dグラフィックス)
回路の対称性に注意し、各部を流れる電流を分類します。
I1=IAC=IAE=IDB=IFB
I2=IAG=IHB
I3=IGI=IGK=IJH=ILH
I4=IIC=IKE=IDJ=IFL
I5=IIQ=IKS=IQM=ISO=INR=IPT=IRJ=ITL
I6=ICM=IEO=IND=IPF
I7=ICD=IEF
I8=IMN=IOP
点Aと点Bの間に流れる全電流を I とすると、 各部を流れる電流には次のような関
係があります。
I=2 I1+I2、I2=2 I3、I3=I4+I5、I1+I4=I6+I7、I5+I6=I8
また、点Aと点Cの間に加わる電圧VACから、
VAC=I1R=I2R+I3R+I4R → I1=I2+I3+I4
そして、点 I と点Mの間に加わる電圧VIMから、
VIM=2 I5R=I4R+I6R → 2 I5=I4+I6
さらに、点Cと点Dの間に加わる電圧VCDから、
VCD=2 I6R+I8R=I7R → 2 I6+I8=I7
以上の八つの式を連立方程式として解くと、
I1=17 I/44、I2=5 I/22、I3=5 I/44、I4=I/22、I5=3 I/44、I6=I/11
I7=15 I/44、I8=7 I/44
が得られます。従って、点Aと点Bの間の電圧VABは、
VAB=2 I1R+I7R=(17 I/22+15 I/44)R=(49 I/44)R
=(49R/44) I
となり、 点Aと点Bから見た抵抗の値は49R/44となります。 ネットに接続される抵
抗の数が増えると抵抗値がRに徐々に近付いて行くことが予想されます。
課題(その1)
図3の回路を一回り及び二回り大きくして抵抗値RABを計算してください。
課題(その2)
抵抗値RABが最終的にRに収束することを証明してください。無限数列のテクニック
を使っても良いですし、その他の方法で証明しても構いません。
課題(その3)
同じ抵抗値を持つ抵抗素子を使って図3の回路を組んでください。 さらに、電源を用
いて端子Aと端子Bの間に電圧を加えて その端子間に流れる電流を測定してくださ
い。電圧と電流の関係をグラフにしその勾配からRABを計算してください。
注意:抵抗素子には許容電力があります。これを超えると発熱やダメージの原因に
なります。また、電源の取り扱いにも注意してください(感電など)。