連分数の計算
連分数とは、分母に分数が再度現れる分数を言います。 ここでは、オームの法則
を使って抵抗の値を求める問題で連分数の計算を行ってみます。直列抵抗の場合
は、 抵抗を流れる電流は同じでそれぞれの抵抗に加わる電圧の和が印加電圧
全体に等しくなります。 また、並列抵抗の場合は、それぞれの抵抗に流れる電流
の和が回路に流れる全電流で、 印加電圧はそれぞれの抵抗に加わる電圧と等
しくなります(図1参照)。
オームの法則: V=I R (単位は、ボルト、アンペア、オーム)
直列抵抗の値: R1+R2+R3+・・・+RN
並列抵抗の値: 1/(1/R1+1/R2+1/R3+・・・+1/RN) (連分数)
<上:直列接続 下:並列接続>
それでは、以下のような梯子型やネット型の抵抗値を計算してみてください。抵抗
素子の抵抗値はすべて1オームとします(図2および図3参照)。
<梯子型の抵抗接続>
<ネット型の抵抗接続>
上の梯子型の抵抗接続において、 右側に抵抗素子をさらに追加して行って最終的
に無限の抵抗素子を追加した場合、 回路全体の抵抗値はどうなるでしょうか。 有
限の値に収束する!?
下図は、ネット型の抵抗接続を少し変形させたものです。中央の端子から見た抵抗
値を計算してください。 また、上下左右に抵抗素子を限りなく増やした場合に、 こ
の抵抗値はどうなるでしょうか(図4参照)。
<ネット変形型の抵抗接続>
今までは、平面上に配置された抵抗素子の値を計算してきました。 これを三次元
空間に拡張してみましょう。アメリカで半世紀前に開発されたIC(Integrated Circuit
)チップも、 高速化・高密度化の要求に伴って、 素子の平面配置から立体配置に
大きく舵を切り始めています。今後、半導体分野に進む方もいるでしょうから、少し
立体的な素子の配置も検討します。
次の図は、各辺が抵抗体で形成された正六面体の骨格です。 各辺の抵抗値が1
オームとして、PQ間の全抵抗値を計算してみます。図形の対称性に着目すること
が重要です(図5参照)。
<正六面体型の抵抗接続>
(Functionviewで作成)
図形の対称性から、点Pに電圧Vが印加されるとして各点の電圧の大きさを比較す
ると以下のようになります。ただし、点Qの電圧は接地レベル(0ボルト)とします。
VP=VA>VB=VD=VE>VC=VF=VH>VG=VQ
したがって、点Pから流れ込む全電流が I だとすると、各抵抗を流れる電流は、
点AB間、点AD間、点AE間、点CG間、点FG間、点HG間: I/3
点BC間、点BF間、点DC間、点DH間、点EF間、点EH間: I/6
となります。以上から、点PQ間の抵抗値を計算すると、
V=1オームX( I/3 )+1オームX( I/6 )+1オームX( I/3 )
=(1/3オーム+1/6オーム+1/3オーム)X I
=(5/6オーム)X I
ということになります。 これ以外にも、 別な抵抗値を示す点の組み合わせがありま
す。その組み合わせを求め、それぞれの場合の抵抗値を計算してみてください。
さて、正多面体には正六面体だけでなく、正四面体、正八面体、正十二面体、正
二十面体があります。それぞれの場合について、抵抗値を計算しその値の違いに
よって、頂点間の組み合わせを分類してみてください。各辺の抵抗値は前と同様に
1オームとします。
あるブラックボックスの中に、 各辺の抵抗値が1オームである平面図形または立
体図形の骨組みが入っているとします。 各頂点間の抵抗値は、外部から電圧を加
えて電流を流し測定できるものとします。これらの測定値から、内部の構造を推定
できるでしょうか。 また、その推定のために何らかの条件が必要だとして、 その条
件はどのようなものになりますか!?
課題(その1)
複数の抵抗素子を結線した回路に関して、任意の二点から見た抵抗値を計算する
プログラムを作成してください。 結線情報やそれぞれの抵抗値はファイルから読み
込むようにします。
ホイートストーン・ブリッジ回路
ホイートストーン・ブリッジ回路は、 英国の物理学者であるチャールズ・ホイート
ストーン(Charles Wheatstone)によって発明された、電気抵抗を精密に測るための
電気回路です。 このブリッジ回路についても、キルヒホッフの法則などを活用して
少し議論してみましょう。