最短時間・最短距離
最短時間・最短距離を求める問題は、 数学だけに限ったテーマではありません。
物理学でもしばしばテーマになる問題です。以下の図は、正四面体の立体図形で
す。 線分ACの中点Fと線分BDの中点Eを結ぶ最短距離は、空間的に考えれば、
線分EF(赤い点線)で与えられます。 では、線分CD上の点Gを経由して表面上を
最短で結ぶライン(赤い線)を求めてください。このときのラインの長さはどうなりま
すか。線分EFの長さと比較してみてください(図1参照)。
(Functionviewで作成)
上の問題を少し物理的にしてみましょう。 表面上の最短距離で、三角形ADC上お
よび三角形BCD上を移動する速度が一定だとすると、 この問題は最短時間の問
題になります。三角形ADC上を移動する速度が三角形BCD上を移動する速度の
二倍になる場合、最短時間になるラインは速度一定のときとは異なってきます。そ
のラインを求めてみてください。 速度の関係が逆になった場合はどうでしょうか!
?
下図は、二つの異なる物質の界面で起こる光の屈折現象を示す図です。物質1内
を進んでくる光は物質2との界面で屈折し、光の進行方向が変わっているのが判り
ます。この原因は、物質内を進む光の速度が変化することにあります。線分ABと
線分CDは光の波面(平面波)を示しています。この例では、速度の比が2:1にな
っているので、 線分の長さの比がBD:AC=2:1ということになります(図2参照)
。
光の特性として、空間の最短距離EFを通っていないことに注意してください。図か
ら判るように、EAFという経路を通っています。 速度が速い領域が増えていること
が判ります。つまり、光を律している原理は最短距離ではなく、最短時間だというこ
とになります。
(Functionviewで作成)
上記で得た結論を思考実験でさらに検証してみましょう。物質2内の光の速度をさ
らに落としてみましょう。 そうすると、 上図は、以下のように修正されます。物質2
内の光の進行方向は界面に対してほぼ垂直な方向となります。したがって、光が
物質2内を進む距離は最小化されることが判ります。 このことは、 最短時間の原
則の証拠と言っても良いでしょう(図3参照)。
(Functionviewで作成)
それでは、光がなぜ最短距離ではなく、 最短時間の原則に従っているのかを考え
てみてください。光の性質として、他の物質の性質とは異なるものがたくさんありま
す。例えば、光の速度です。質量を持つ物質は、アインシュタインの相対性理論
から、光速に近づくことは極めて困難になります。 当然、光速を超えることは想定
していません。一方、アインシュタインが導いた有名な式であるE=MC2という考
え方からすれば、エネルギー (*)と質量との間には大きなギャップはないように思
われます!? 光は本当にこの世(私たちの次元)のもの? そして、 光は目的の
点に到達する前に、どのコースが最短時間のコースか既に判っている?
* 光は質量を持たないが、エネルギーを持つ
屈折角と光の速度の関係
二つの異なる物質間の界面で、光が屈折するときの角度を求めてみましょう。まず
は、以下の図をみてください(図4参照)。
入射角=∠DAB=θ1 屈折角=∠ADC=θ2
(Functionviewで作成)
物質1側の入射光のライン(赤)とAを通る垂直なライン(ピンク)との間にできる角
が入射角θ1になります。一方、物質2側の屈折光のライン(赤)とAを通る垂直な
ライン(ピンク)との間にできる角が屈折角θ2になります。これらの角と光の速度
との関係は、
V1/ V2=DB/AC=(AD SINθ1)/(AD SINθ2)=SINθ1/SINθ2
となります。