宇宙ステーションの為の人工重力
21世紀初頭において、 まだ、 人類は重力をコントロールできるような物理的な理
論を持ち合わせていませんが(ヨーロッパのCERNでは、質量の謎を解く上で鍵とな
る素粒子の探索は行われている)、 遠心力を活用して重力と等価な見かけの力を
発生させる宇宙ステーションの研究は行われています。 今後、人類が宇宙空間に
大挙して進出するためにも、 人工重力を発生させるシステムの開発は重要と言え
るでしょう。
構築する宇宙ステーションのサイズにも依るでしょうが、人工重力を発生させるため
に必要なステーションモジュールの回転数を見積もってみます。 モジュールの半径
は100 mから1 kmとして検討しました。 月や火星への移住の前段階として、 宇
宙ステーション内に居住する人が多くなるでしょうから、 人工重力の大きさは、 必ず
しも地上のように9.8 m/s2(加速度で換算)である必要はありません。
まずは、地球・月・火星の表面における重力の大きさを比較することを考えます。万
有引力の式は以下のようになります。
F万有引力=mMG/ R2
mは惑星または衛星の表面にある物体の質量、Mは惑星または衛星自身の総質量
、そして、Rは惑星または衛星の半径です。ここでは、惑星または衛星の質量が、そ
れぞれの中心に集中していると仮定しています。
上式から判るように、表面での重力加速度は
A重力=MG/ R2
となります。
したがって、地球を基準とした重力の大きさの比は
F月/F地球=M月R地球2/M地球R月2
F火星/F地球=M火星R地球2/M地球R火星2
となることに注意してください。それぞれの惑星や衛星のパラメータは
M地球=6.0X1024 kg R地球=6.4X106 m
M月=0.012 M地球 R月=1.7X106 m
M火星=0.11 M地球 R火星=3.4X106 m
となっているので、これらを式に代入して
F月/F地球=0.17
F火星/F地球=0.39
と数値的に得られます。 以上から、 月や火星に小規模な宇宙基地そして大規模な
コロニーを建設したとしても、 重力環境は地球に比べて相当異なったものになるこ
とが判ります。
では、地球並みの重力を得るための回転数を計算してみます。 宇宙ステーションの
形状としては、以下のようなドーナツ型を考えています(図1参照)。