5-6.原子力工学


 

原子力工学に関する書籍

Nuclear Engineering

Nuclear Fission

Nuclear Fusion

 

 

宇宙における普遍的なエネルギー源原子力です。  最近持て囃されている自然

エネルギー(注)も本を正せば、  太陽内で発生している核融合エネルギーであり、

地球内部で発生している放射性物質の崩壊エネルギーです。  月の引力で生み出

されるのエネルギーもありますが、月が地球から徐々に遠ざかっており永遠に続

くものではありません。 また、将来的に太陽から遠い火星での生活を考えると、

石燃料が存在しない訳で、原子力エネルギーがエネルギー源のメインになることは

明白と言えるでしょう。また、アメリカロシアで検討が進んでいる原子力技術を使

ったロケットの推進システムは、 化学エネルギーに依存した既存のロケットエンジ

ンのスピードや行動範囲を革命的に変える可能性を持っています。扱い方を間違う

と大きな事故の原因にもなりますが、 人類の宇宙進出のためにどんどんこの分野

でトライしてください。 宇宙自体は、高エネルギー物質放射線で充満しています

厚い大気で覆われた地球表面は、 むしろ宇宙環境からすると特異な場所と言え

ます。 人間が身に付ける衣服(正確には、宇宙服)または住居(正確には、宇宙基

または宇宙船)の外側は、宇宙線だらけという時代はすぐそこまで来ています。

 

自然の猛威がなぜ圧倒的なのかも良く判っていただけたはずです。 つまり、自然の

原動力が原子力だからです ( 質量からエネルギーへの変換システムとして極めて

効率が良い)。 したがって、人類が原子力技術を自由に使いこなせないと自然災害

も永久に克服できないことになります。

 

(注)

太陽光風力、  そして地熱などがまったく原子力エネルギーと無関係に扱われて

いるのは、ちょっと表面的過ぎます。 マスコミの無知がそうさせているのでしょうが、

技術者の皆さんは、ものの本質を良く捉えておく必要があります。  原子力エネルギ

ーのお零れに預かった上記の技術が一過性の技術であり、  あくまでも原子力エネ

ルギーが本命であることを肝に銘じておきましょう。 蛇足ですが、 日本のマスコミは

特にレベルが低いので注意しましょう。学問分野とも共通しますが、海外のものと常

に比較して物事を考えるべきです。外国語を学ぶことはそういう点でも重要です。

 

さて、原子核のサイズは10-15程度であり、 直接観察する方法もあまりなくその

構造もよく判っていないのが現状です。現在は、 巨大な加速器を使って電荷を持た

ない中性子などを原子核にぶつけて、 間接的にその構造を推定しているのに過ぎ

ません。 そういう点では、学問的にやるべきことはまだたくさんあります。 試験管の

中で起こると言われるコールド核融合現象で、世界の物理学会が時々侃侃諤諤と

なるのも原子核そのものの理解度の低さ故かもしれません。

 

ここで、 原子核の中で働いていると言われる核力の大きさを見積もってみましょう。

陽子中性子をそれぞれ2個ずつ持つヘリウムの原子核を考えてください。   中性

子は電荷を持ちませんが、 陽子は電子と同じ電気量でその符号は+の電荷を持ち

ます。  ヘリウムの場合、 原子核内に2つの陽子がある訳ですから、 その電気的な

反発力を上回る何かがなければ、 この2つの陽子はバラバラになってしまいます。

したがって、  核力の大きさは原子核内で働く上記の陽子間の電気的な反発力から

ある程度見積もれることになります。クーロン力は以下の式で与えられます。

 

F=q Q /4πε

 

陽子の電気量を1.60X10−19 Cとし、真空中の誘電率ε8.85X10−12

F/mとすれば、Rが10−15 mのオーダーなので、

 

F=230 (N)

 

となります。この値は、小さいそれとも大きい!?ちなみに、水素原子の陽子・電子

間に働くクーロン力は水素原子のサイズが10−10m程度なので、上記で推定した

核力の値よりも相当小さいことが判ります(1010分の1ぐらいになる)。この原子核

レベルの核反応と原子レベルの化学反応の力の差(エネルギーの差と言い換えて

も良いですが)が、  多くの物理学者に上記で出てきたコールド核融合現象に関して

否定的な態度を取らせているのです。 とは言え、 物事を単純化することで進んでき

た物理学の理論に大きな穴がないと言い切れません。 例えば、陽子や中性子は、

原子核内でもそれぞれが単独で存在しているときのような性質や構造を維持してい

るかなど、チェックするべき点は多々あるように思います。 生命現象などもそうです

が、 システムが複雑になると扱うべきパラメータ数が極めて膨大になり、 モデル化

がある程度できたとしても、  すべてを考慮したシミュレーションを行うことが極めて

困難になります。 物理学でも、この事情はまったく変わりません。高温超電導物質

の特性を説明する理論形成に悪戦苦闘しているのも、その為です。 人間の頭脳は

まだそれ程賢くない!?科学分野の傾向として、判り易いものは詳細に調べ、 判り

難いものは後回しという雰囲気がない訳でもありません。 ときには、無視することも

ある!?一般の人は、科学者がなんでも知っていると錯覚しないことが大切です。

 

 

宇宙での原子力エネルギーの利用

 

 


 

シカゴ大学で行われた核分裂連鎖反応に関するシンポジウムの資料を示して置き

す。最初の原子炉建設から広島・長崎への原爆投下そして原子力の平和利用など

、一連の経緯が詳しく記されています。

 

The Nuclear Chain Reaction - Forty Years Later

 

 


 

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