ひもの問題(その2)
大学の入試問題では質量のないひもを扱うことが一般的ですが、ここでは、現実に
近付けるためにひもに質量を持たせることを考えます。まずは、連続的にしなやか
に曲がるひもの代わりに、直線的な短い棒を連結したもので考えてみます。
図1は長さと質量が等しい三つの棒をそれぞれ連結したものです。 両端と接続部
はなめらかに動くことができるように質量がないジョイントで繋がっています。 AD
間の長さをL1とします。 棒の長さと質量はL2(<L1)とMです。 棒ABと垂直方向
との角度はθとします。
棒の配置の対称性から、θは以下の式を満足します。
(L1−L2) / 2=L2SINθ
それでは、棒ABに働く力や力のモーメントのつり合いを考えてみましょう。 端Aに
働く力の成分表示を(FXA、FYA)、端Bに働く力の成分表示を(FXB、FYB)とすると
、棒ABに関する力のつり合いは、
X成分: FXA=FXB・・・・・(1)
Y成分: FYA=MG+FYB・・・・・(2)
となります。一方、力のモーメントのつり合い(端Aに関して)は、
MGL2SINθ/ 2+FYBL2SINθ=FXBL2COSθ・・・・・(3)
となります。上の各成分の値を計算するために、真ん中にある棒BCに注目します。
この棒に働く力のつり合いから、
2 FYB=MG・・・・・(4)
が得られます。 ゆえに、 FYB=MG / 2 となります。 この結果を(2)に代入して、
FYA=3MG / 2 となります。 さらに、これらの結果を(3)に代入して、FXB=MG
TANθ(=FXA)が得られます。 θ=π/2の場合、すなわち、棒が一直線上に配
置されるためには、 無限大の力で両側から引っ張られる必要があることが判りま
す。 実際にはこれは不可能ですから、質量があるひもは必ず弛むという結論にな
ります。
短い棒の数を5本に増やして、それぞれの棒に働く力や傾きを求めてみてください(
図2参照)。そして、棒CDの質量が他の棒の質量の5倍ある場合はどうなるかも検
討してみてください。 また、棒DEの質量だけが5倍になっている場合はどうでしょう
か(非対称な例)。
さて、上記の議論をN個まで拡張することを考えてください。 また、それぞれの棒の
重心の位置は何によって決まっていますか。 もし、 重力下の位置エネルギーが重
要な役割を果たしているとすると、それをどうすれば検証できるでしょうか。
棒の質量を調節して棒の数を無限に増やして行けば、実際のひもの状態をシミュレ
ーションできます。 このシミュレーションの結果を検証する意味でも、実験をすること
は重要です。 20個から30個の短い棒でできたひもを使って、実際のひもの曲線の
形状と比較してみてください。