答え(球、その3)
球の半径はRで、その質量はMであるとします。 また、 球の衝突は完全な弾性衝
突であると仮定すると、 衝突の前後で二つの球の運動量の和は保存されます。
まず、 平面上で転がる球について考えます。 球Aの速度をVAとし、 球Bの速度を
VBとします。 衝突時において、 一つの球が他の球に及ぼす力はそれぞれの球の
中心を結ぶ方向を向いていると仮定しても良いので、 図1のようになります。 ただ
し、球を真上から見た図です。球Bと共に動く座標系で検討しても問題の一般性は
失われないので、最初はその座標系で議論を進めます。 したがって、 それぞれの
球の速度(衝突前)は、 球Bの速度が0で球Aの速度はVA+VB=Vとなります。
<球を真上から見た図>
(図1、Functionviewで作成)
運動量保存則に基づいた簡単な計算から、二つの球の中心を結んだ方向の速度
成分が衝突時に交換されることが判ります(この計算は課題とします)。 ゆえに、
衝突後のそれぞれの球の速度は、
球Bと共に動く座標系での速度
X方向(球A): −V SINφCOS(π/2−φ)=−V SIN2φ
Y方向(球A): V SINφSIN(π/2−φ)=V SINφCOSφ
X方向(球B): −V COS2φ
Y方向(球B): −V SINφCOSφ
図1において、上方向がY軸の+方向、右方向がX軸の+方向としています。また、
球Aの進行方向と球の中心を結ぶ方向のなす角度はφとし、以下の関係から計算
できます。
d=2R SINφ
上記の結果を元の座標系の値に焼き直すと、
二つの球が共に動く座標系での速度
X方向(球A): −(VA+VB)・SIN2φ+VB
Y方向(球A): (VA+VB)・SINφCOSφ
X方向(球B): −(VA+VB)・COS2φ+VB
Y方向(球B): −(VA+VB)・SINφCOSφ
となります。以上から、球Aの角度の変化量(時計方向を+)θは、
COSθ={ VA(VA+VB)・SIN2φ−VAVB}/ VA{
(VA−VB)(VA+VB)・SIN2φ+VB2}1/2
の関係から求められます。VA=VBと仮定して、SINφの値を上式に代入して整理
すると、
COSθ=2(d/2R)2−1=d2/2R2−1
が得られます。θは最終的に、
θ=COS−1(d2/2R2−1)
となります。すなわち、d=0のとき、球Aは衝突後180度反対方向に進み、d=2
Rのとき、 球Bとほとんど接触せずに衝突前の進行方向と同じ方向に進みます。
図2は d とθの関係を示した図です。
<横軸はd/Rで表示>
(図2、Functionviewで作成)
課題(その1)
θ=90度になるdの値を求めてください。 ただし、 二つの球の質量は同じで半径
はRとします。また、VA=VBとします。
課題(その2)
球Aの質量をMA、球Bの質量をMBとしたときのθの式を求めてください。 MB>>
MAの極限におけるdとθの関係を示すグラフを作成してください。