面積を求める
高校の数学2や数学3で学ぶ積分は、不定積分ができるものに限って問題が作ら
れています。では、不定積分が簡単に求められない場合はどうすればよいのでしょ
うか。ここでは面積の計算を通して数値積分のやり方を検討してみましょう。
まず、円の面積を求めることを考えます。半径を1とすると、小学校や中学校では
円周率に半径の二乗をかけてπ・12 つまりπという結果が教えられます。 この公
式はいったいどのようにして得られたのでしょうか。 勿論、円周率のところで検討し
たように、 内接する正多角形の面積で近似するというやり方もありますが、 高校
で学ぶ積分の方法を使えば容易に公式を証明できます(図形的な近似計算に興味
がある受講生の方は以下のリンクに飛んでください)。
以下の図は、十進BASICのプログラムを使って描いた円のグラフです(図1参照)。
積分を使って円の面積を求めてみます。X-Yの直交座標で計算しようとすると計算
が複雑になるので、極座標に変換して計算します。
円の式: X2+Y2=1 → Y=(1−X2)1/2
積分式: S=4∫(1−X2)1/2 dX (4分の1円の面積X4)
ここで、積分の範囲は0から1までです。
極座標の変換式とそれを用いた円の面積の積分式は、
変換式: X=COSθ Y=SINθ
積分式: S=4∫(1−COS2θ)1/2 (−SINθdθ)
ここで、積分の範囲はπ/2から0までです。
この積分は、次のように計算できます。
S=−4∫SIN2θdθ=−4∫(1−COS2θ) dθ/ 2=π
積分の範囲は前の積分式と同じものになります。
これで、 円の面積がπに半径( 上の例では、1)の二乗をかけたものであることが
証明できました(変換式のSIN、COSの前にRを付ければ、円の面積はπR2となる
)。
次に、数値積分の方法を使って円の面積を計算してみます(図2参照)。
4分の1円の面積: S=ΣhiΔxi (i:1→n)
上図のように、 4分の1円の面積をいくつかの長方形の面積の和として近似す
る訳です。 この場合も分割数をあまり増やさず近似の精度を上げるアルゴリズム
はたくさんあります。 ここでは、積分範囲を等分割し刻み幅の真ん中のX座標での
高さを使って、それぞれの長方形の面積を計算して円の面積を近似しています。
十進BASICのプログラムを以下に示します。
円の面積に関する数値積分の結果だけでなく、 十進BASICに組み込まれている
πの値も表示させました。分割数100、1000そして10000について計算した結果
果を見ると、実際のπの値よりも大きめになっていることが判ります。 これは高さを
計算するときのX座標を刻み幅の真ん中で取ったためです。 この取り方をいろいろ
変えて試してみてください。
半径を1とした場合、 上記の数値積分は円周率の計算にも使えることを最後に指
摘しておきます。
曲面の面積
今までは、 平面上に描かれた図形の面積を計算する方法を議論してきましたが、
曲面上に描かれた図形の面積の計算方法も検討してみます。 身近な問題として
よく中学や高校などの試験でも使われる球の表面積を計算してみましょう。レベル
的には発展編並みになっているので、 難しいと感じる方は読み飛ばしても構いま
せん。
最初に積分を使わずに球の表面積を計算してみます。半径が僅かに異なる二つの
球を考えてください。 小さい方の球の半径はRで、 大きい方の球の半径はR+ΔR
とします。 したがって、二つの球の体積の差は球の体積の公式を使って、次によう
に与えられます( 図3参照、Functionviewで作成 )。図で言うと、半径Rは線分OA
であり、ΔRは線分ABです。
ΔV=4π ( R+ΔR )3/ 3−4π R3/ 3
=4π{ ( R+ΔR )3−R3 }/ 3
=4π( 3R2ΔR+3RΔR2+ΔR3 )/ 3
ここで、 体積の増加分が薄い球殻の体積(小さい方の球の表面積SにΔRをか
けたもので近似)であることに注意すると、
SΔR=4π( 3R2ΔR+3RΔR2+ΔR3 )/ 3 (近似)
→S=4π( 3R2+3RΔR+ΔR2 )/ 3 (近似)
上式の極限をとると、
S=Lim 4π( 3R2+3RΔR+ΔR2 )/ 3=4πR2 ( ΔR→0 )
となり、球の表面積が4πR2であることが判ります ( 球の体積の公式をRで微分し
た形になっている)。
それでは、積分法を使って球の表面積を計算してみます。 発展編の体積を求める
で使用した球座標で計算します。変換式をもう一度復習すると、
X=R COSθ SINφ
Y=R SINθ SINφ
Z=R COSφ
球面上の微小な面積はRが固定されているとして、θ方向とφ方向の微小な変化
を使って、
θ方向の微小な変化: RΔθ SINφ (線分BCに相当)
φ方向の微小な変化: RΔφ (線分ABに相当)
球面上の微小な面積: R2 SINφΔθΔφ (四角形ABCDに相当)
と表せます(図4参照、Functionviewで作成)。したがって、球の表面積を求める積
分式(二重積分または面積積分とも言われる)は
積分式: S=∫∫R2 SINφdθdφ=4πR2
ここで、積分の範囲は、θが0から2πまでであり、φが0からπまでです。
中学校で習う二次関数の式、 Z=X2をZ軸に関して回転させてできる立体図形の
表面積を計算してみてください。 ただし、Zの範囲は0から3までとします(図5参照
、Functionviewで作成)。
また、式、X2/4+Y2/9=1で表せる楕円をX軸またはY軸に関して回転させてで
きる楕円体の表面積を計算してみてください(図6参照、Functionviewで作成)。
図5と図6の回転軸は、それぞれ、Z軸とY軸になってますので、注意してください。